2011-01-01から1年間の記事一覧

SPEEDIと研究者(続報)

本日アップされたWeb記事によると、東大の早野龍五教授(私自身は面識はありません)は、SPEEDIの存在を聞きつけて、3月17日の段階で鈴木寛文部科学副大臣(当時)と直接会って、データを公開するように要望したそうです。 http://bizmakoto.jp/makoto/artic…

「One Voice」と「No Voice」

WEBRONZAの記事を書いているうちに、牧野さん以外にも、明らかに「SPEEDI」の非公開に振り回された人がいることに思い当った。 牧野さんが文部科学省にメールを送ったのと同じ頃、日本気象学会では不可解な通達が流れた。3月18日付の学会理事長から会員に…

SPEEDIのデータ非公開に翻弄された研究者たち

12月23日、文部科学省は、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」のデータ公表が遅れたことについて、「当初から公表する必要があった」ことを認めた。これを機会に、11月12日の「(追録)隠されたSPEEDIとスルーされた研究者の提…

初めての「栄光なき天才たち」

今から26年前の1985年12月25日、後に「栄光なき天才たち」として連載される作品の第1話を書き上げた。 2年連続して「青年漫画大賞原作部門」を受賞(佳作と準入選)したことで、編集部から何か「読み切り」を書いてみないかと言われていた。 私の方は、「読…

ホログラフィの書籍紹介

寺田寅彦の講演会に、思いがけない方が聴きに来られていました。ホログラフィアートの第一人者である石井勢津子先生です。「面白かった」と感想を伝えに来て頂き、大変嬉しく思いました。ありがとうございました。 http://www.img.cs.titech.ac.jp/~setsuko/…

「寺田寅彦」の市民講演会を終えて

とりあえず、無事に講演会は終わりました。 寺田寅彦は、近代史、科学史においても大変興味深い人物で、そういう紹介はできたかな、と思います。 ただ、私自身は特に寺田寅彦と強い関わりがあるわけでもなく、随筆に精通しているわけでもありません。こうい…

「寺田寅彦」の市民講演会

明日、下記の市民講座(無料)でお話をさせて頂きます。 よろしくお願いいたします。http://www.y2003.phys.waseda.ac.jp/ISCS2011/publec/2011/09/14/hello-world/「身の周りの科学から震災まで:寺田寅彦とサイエンスの今」日時: 2011年 12月 3日…

京とTSUBAMEのゴードンベル賞

高速計算のオリンピックのような存在として、ゴードンベル賞というものがある。その年の最高性能を示した数値シミュレーションに贈られる。今年のゴードンベル賞は「最高性能賞」を「京」(理研、富士通)が、「特別賞」を「TSUBAME」(東工大、NEC/HP)が受…

(追録)隠されたSPEEDIとスルーされた研究者の提言

牧野さんの公開日誌の11月11日は次の3行で始まっている。 ・3月の文科省測定 ・いや、これ見るとSPEEDI の結果を明らかに使ってるなあ、と。15日夜に浪江町津島あたりにいって測定してる。 ・元記事は読んでないんだけど、伊藤君のこれみて。 牧野さんの日誌…

「プロメテウスの罠」 − 追記

私は筆が遅い。 昨夜も、コメントを書き始めたのは11時だったが、あれだけの文章を書きあげるの数時間を要し、アップしたのは午前4時に近かった。どうも頭の中の思考をそのまま文章に転写するのは難しい…。 深夜のもうろうとする頭の中で、肝心なことがぼや…

「プロメテウスの罠」 − 知見と今後への期待(下)

「残念」な点は、私自身がもっともよく知りたいと思っていることが、大震災発生から半年以上も経っているのに、明らかにできていないという現状である。具体的には、下記の3点である。 (1)当事者(政府、官僚、東電)は、どのレベルで情報の統制を行おう…

「プロメテウスの罠」 − 知見と今後への期待(上)

「理性の資質」をアップし終えた10月15日の2日後、17日から朝日新聞で「プロメテウスの罠(研究者の辞表)」が始まり、11月6日、21回の連載記事が終了した。知らなかったことも多く、興味深く読み始めた。ところが、途中から、少々、違和感も覚えた。記事自…

スティーブ・ジョブズとデニス・リッチー、そしてジョン・マッカーシー

機械は知能を持てるだろうか? 専門家でなくても興味をひかれる話題である。 人工知能(AI= Artificial Intelligence)という言葉を最初に提唱し、LISP言語を開発してAI研究を先導したジョン・マッカーシーが10月24日、他界した。スティーブ・ジョブズ(5日…

スティーブ・ジョブズとデニス・リッチー

2011年10月、コンピュータ史に名を残す人物が相次いで、この世を去った。スティーブ・ジョブズとデニス・リッチー。 朝日新聞WEBRONZAで、二人の追悼記事を、コンピュータ史の中における足跡を記す形で書いた。有料ページなので、毎回恐縮であるが、リンクを…

(続)都立武蔵高校

ウィキペデイアを見たら、「武蔵高校」が「都立武蔵高校」に直っていました。 修正して頂いた方、ありがとうございます。

あとがき

「今回の大震災はあなたを変えましたか?」 社会が少しずつ日常を取り戻し始めた頃、テレビ番組でよく耳にした問いかけでした。私自身にとっては、おそらく、「はい」ということになると思います。 最近、「私たちは、自分自身で考えたり、判断したりするこ…

第10章 レベル7

ヨウ素からセシウムへ 4月に入ると、政府や東京電力、原子力安全・保安院などから、公式な情報が出始めてくる。原発事故対応も、中長期的な観点に移り始める。【3月31日】(震災21日目)•原発の全電源喪失、米は30年前に想定 安全規制に活用(朝日新…

理性の資質をアップし終えて

私はどちらかといえば筆が遅い方で、一つのメール(しかも短文)を書くのに30分もかかることがよくあります。ですから、4月からたった3ヶ月で書きあげた文章は推敲も十分ではなく、人にお見せできるものではなかったかもしれません。 ですが、大震災に直面し…

第8章 避難後の命

放射能汚染【3月19日】(震災9日目)•福島県発表(福島県のホームページ資料「緊急モニタリング検査結果について(福島県・原乳)」より)だと川俣町。これは文部科学省測定だと 5uSv/h くらい。で、牛乳中の値は規制値の3倍。ちなみに、ウィンズケール…

第9章 理性の自粛

「自信」と「自負」 震災10日目あたりから、色々な意見が出始めていた。それに対する牧野のコメントを並べてみたい。【3月23日】(震災13日目)・Y氏「放射能漏れに対する個人対策」を読む際に考慮すべき点とはを読む際に考慮すべき点とは: o「今、仮…

第7章 国策がエースをつぶす?

関東全体、一言4万平方キロメートル 牧野は、15日から16日にかけて、放射能汚染の関東地方へ影響を見積もっている。 文部科学省は、15日の大気中の放射線量が、栃木、群馬、埼玉、東京、千葉、神奈川、山梨、静岡の1都7県で、アメリカ、旧ソ連、中国…

第6章 判断しないよりまし

ヨウ素、セシウム、ストロンチウム、プルトニウム•11時の爆発のあとどこかが上がるかどうかが問題。•3号機の爆発では、おそらく1号機から既に漏れた以上の放射性物質が、数百メートル上空まで巻き上げられている。ウィンズケール並に放射性物質が広がるのは…

第5章 原発事故を解析する

原発事故を解析する 再び、牧野教授の公開用日誌に戻る。 3月14〜16日にかけて、牧野は自分の頭脳をフル回転させている。この時期において、科学的根拠を示しながら、これだけの情報を発信した科学者を、私は他に確認できていない。 ただし、ここの記述…

第4章 天災と人災

計画停電(輪番停電) 3月11日(金)に地震が発生し、未曾有の津波被害に原発事故と、経験したことのない事態に日本社会の指揮系統は混乱した。その際たるものが週明けの14日(月)に生じた。 再び、この時期の社会動向を、私自身の経験をもとに確認し…

第3章 牧野教授の公開用日誌

エースはどこに? 次々と報道が流れているのにもかかわらず、社会は確固たる知見が得られずにいらだっていた。逆に不確かな情報が氾濫するという事態に陥っていた。 例えば、テレビからは、放射能汚染に関して、専門家が決まり文句のように繰り返して発言し…

第2章 科学者の資質

顔の見えない科学者たち 東日本大震災は津波被害だけでも甚大であり、それだけでも歴史的な地震災害となった。そこに発生した原発事故。「安全神話」は崩壊し、世界中の関心が「フクシマ」に集まっていく。 研究室に設置されたテレビ画面から、福島第一原発…

第1章 硬直する社会

地震発生 2011年3月11日(金)14時46分、東北地方三陸沖を震源とするマグニチュード9.0という巨大地震が発生した。「東北地方太平洋沖地震」である。国内観測史上最大で、地球規模においても1900年以降、世界第4位という大きさであった。…

まえがき

顔の見えない科学者たち 東日本大震災は、観測史上最大規模の大地震による複合型震災として、歴史に刻まれることとなった。3つの大地震が連動する本震に、震度6を記録する余震。津波の脅威は映像として世界中に流れた。 多くの犠牲者を出しながらも、被災…

タイトルと目次

「理性の資質」− 東日本大震災1ケ月の記録と福島原発を解析し続けた科学者 −伊藤智義【執筆期間:2011年4−7月】 目次まえがき 第1章 硬直する社会 第2章 科学者の資質 第3章 牧野教授の公開用日誌 第4章 天災と人災 第5章 科学者の資質 第6章 判断し…

新著「理性の資質」

3月11日に東日本大震災が起きた。私自身、いろいろ考えるところがあった。それらのことを、4月から7月にかけて、一冊の本の形に書き記した。このブログを立ち上げたのは、その文章を公開したいと思ったからである。 ところが、幸い、ある出版社が興味を示し…