「プロメテウスの罠」 − 知見と今後への期待(上)

 「理性の資質」をアップし終えた10月15日の2日後、17日から朝日新聞で「プロメテウスの罠(研究者の辞表)」が始まり、11月6日、21回の連載記事が終了した。知らなかったことも多く、興味深く読み始めた。ところが、途中から、少々、違和感も覚えた。記事自体は明確で、取り組んだ記者の方たちに非があるとは思っていない。現代におけるジャーナリズムの限界というものが、記事の端々から見え隠れしたからだ。

 まず、興味深く思った「知見」を記そう。
 サブタイトルの主人公である木村真三さんである。実は、私にとっては初めて聞く名前であった。震災後、しばらくして、私はあまりテレビを見なくなった。日常に追われていて時間的な余裕がなかったこともあるが、テレビの報道に少々失望していた感もある。ニュースだけであれば、インターネットでも十分である。そのため、5月15日に放映されたというNHK ETV特集「ネットワ―クで作る放射能汚染地図」も知らなかった。
 やはり、いてもたってもいられずに行動を起こした専門家がいたことに、何というか、安堵した。本文にも書いたが、研究者とはそういう職業人のはずである。そのことを端的に示していたからだった。さらには、同行したNHKディレクタがいた事実に、正直なところ、驚いた。報道の中にも、自分の足で仕事をしていた人たちがいたからである。

 彼らの存在は、まだ日には当たっていないが、大震災の動乱期においても信念にもとづいて行動した人たちが少なからず存在していたことを示唆している。
 「プロメテウスの罠」はシリーズ化しているようなので、そういう人たちの活躍が多く紹介されるよう、期待している。