第10章 レベル7

ヨウ素からセシウム

 4月に入ると、政府や東京電力原子力安全・保安院などから、公式な情報が出始めてくる。原発事故対応も、中長期的な観点に移り始める。

【3月31日】(震災21日目)

原発の全電源喪失、米は30年前に想定 安全規制に活用(朝日新聞社ニュース)
バッテリーが4時間使用可能な場合は、停電開始後5時間で「燃料が露出」、5時間半後に「燃料は485度に達し、水素も発生」、6時間後に「燃料の溶融(メルトダウン)開始」、7時間後に「圧力容器下部が損傷」、8時間半後に「格納容器損傷」という結果が出た。

まあそんなものだわね。

GEの関連会社で沸騰水型の維持管理に長年携わってきた原子力コンサルタントのSさんは「このシミュレーションは現時点でも十分に有効だ。ただ電力会社でこうした過去の知見が受け継がれているかどうかはわからない」と話す。

いやまあ、日本でも最近もシミュレーションもやられていて報告書もあるんですが、、、

【4月1日】(震災22日目)

•辞令もらうとかあったかな。

 牧野の職場が異動となった日で、コメントは少ない。

【4月2日】(震災23日目)

•Hさんとこから これ(日本分析センターのホームページ資料より) みればすぐにわかると思うけど、縦軸のスケールが核種によって違うので、 1つの核種の相対的な時間変化はわかるけどこのグラフで核種間の比を議論してはいけません。

•現在空間放射線率に寄与しているのは I-131、3/21-23 は I-132 だったわけですが、グラフでは Cs-134 のほうが上になっていてそんなことはもちろんありえないわけです。

•物理の人は、縦軸に書いてある目盛りと実際にプロットしてあるものが違うなんて考えたことがないのかな?天文ではそんなことは日常茶飯事である。間違えたか必要があって意図的にずらしている(もちろんこの時にはキャプションで説明するけど) かは別にして。

•グラフをプリントアウトして線ひいてもうちょっと検討。確かに、3/27 以降の総量の減少が非常に遅い。Cs-134 がメインとしても矛盾はなさそう。但し、空間線量の総量と、個別のは合計があわないので何か違うはず。

•と、あと、問題は Cs-134 が Cs-137 の5倍もあるのは本当か?と。核爆弾では Cs-134 はできないけど、原子炉の中では Cs-133 が中性子捕獲して 134 になる。シミュレーションの結果とかを見ると、、、放射性物質の量(ベクレル単位)では 134 が少ないけど、発熱では多い?β崩壊の時にでるものがだいぶ違う?

http://adsabs.harvard.edu/abs/1954PhRv...96.1022J だとアブストラクトには収率が書いてない。

•あ、Cs-134 はγ線が沢山でるのか。CNIC の記述では Cs-137 に比べて大体3倍。で、ベクレルで数えて同じくらいから倍くらいあっても不思議ではないので、γ線だけ測ると多いわけだ。ふむ。人体への害はよほどレベルが高いところ以外は内部被曝なので、その意味では 134 が多いのはそれほど重要ではないけど、現在ふってるものはすでに Cs がメインと、、、

•これは結構大変な話で、食品等の規制は 137 しか測ってないと思うけど、 134の半減期も生物学的半減期より長いんだから影響は 137 と同じかそれ以上。なので、134 は別に測って影響を 137 と足す必要があって、そうすると効果は 3-4倍になる。

•うーん、グラフは素直にみても良かったのか。 Cs-134 の寄与がこんなに大きいというのは私の先入観にあってなかった、というだけで、本当に大きいんだ、、、つまりは、もう年単位で汚染は減らない、また風と雨によっては増える、と。

 重要な点を要約すると、この時期における放射性物質の主流は、ヨウ素131からセシウム137に移っていることと、あまり認識されていないが、セシウム134も無視できないことである。

 第6章で、世界最初といわれるイギリスのウィンズケール原発事故をもとにした放射性物質の拡散についての報告書(荒廃した生活環境の先端技術による回復研究連絡委員会報告「放射性物質による環境汚染の予防と環境の回復」平成15年5月20日 日本学術会議)を紹介した。
 放出された核種の中で環境影響上重要なものは、ヨウ素セシウムストロンチウムプルトニウムである。さらに、ストロンチウムプルトニウムはほとんど拡散せず、広がっていくのはヨウ素セシウムであり、その量はヨウ素の方がセシウムより100倍多い。そのため、「ヨウ素131は半減期が8日と短いので事故直後の被曝線量への寄与が大きく、セシウム137は半減期が30年と長く、土壌表面からの移行速度も小さい」。
 事故発生から24日(8日×3)近く経っているこの頃では、ヨウ素131は(2分の1)×(2分の1)×(2分の1)=8分の1近くまで減ってきており、環境における放射性物質の注目はセシウム137に移ってきている。
 上の記述は、さらにセシウム134が無視できない量、観測されていることを示している。セシウム134の半減期は2年で、それほど急速には減少しない。

子どもの被爆量を確認する

原発30キロ圏外、子供の被ばく量「問題なし」(読売新聞社ニュース)。気になったので計算。

•まず、甲状腺の大きさに比べてカウンターまでの距離が近いと仮定して計算。そうすると、IAEA の 1Sv/h = 7.7E11 Bq/m^2 で、甲状腺の断面積をかけると I-131 の量が求まる。子供の甲状腺の断面積がよくわからないが、オーダーとしては 10cm^2 であろう。

•これは1e-3m^2 なので、1Sv/h = 7.7E8Bq となる。なので、 0.2uSv/h は 1.5E2Bq。

•これ(文部科学省「環境放射線データベース」のホームページ資料「預託実効線量とは?」より)だと I-131 の実効線量係数は 2E-5 mSv/Bq なので、掛け算したら 2uSv。

•但し、実効線量係数は、摂取したものが吸収される効率もはいってるので、甲状腺に実際にある量から被曝量への換算もう1桁くらい大きくするべき。

•としても20uSv なので、測定のしかたが適切なら十分低い。

•こっち(朝日新聞社ニュース)見ると環境放射線レベルが 10uSv/h まで上がっているところで測定精度があるのかどうか?だけど。

•あ、使ったのが GM管だと、距離が近い、という近似がペケな可能性あり。数倍間違ってるかも。

•とはいえ、子供が体内に取り込んだ分が、その辺の地面1cm^2にあるくらいでしかない、というのは、大変素晴らしいことである。

 ここでの計算も今までと同様、シーベルトとベクレル(キュリー)の換算式から出発している。繰り返しになるので詳細は記さないが、結果は十分に安全であることを確認している。
 科学者の資質として牧野が優れている点は、公表されたことを鵜呑みにせず、自分の理解できるところまで自力で行っている点である。その結果にもとづいて、おかしければおかしいと批判し、今回のように、正しければ正しいと賞賛している。

今までやってきたことは×××

【4月3日】(震災24日目)

放射性物質止まる時期「数カ月後が目標」 細野補佐官(朝日新聞社ニュース)
細野氏は「国民に不安を与えないためにも目標を設定すること(が大事だ)。原子炉を冷却する仕組みを完全に作って安定させるという目標がある。試行錯誤で行っていることを説明する時期が来た」と述べ、放射性物質の放出が止まる時期の見通しを語った。

今までやってたことは×××(一応伏字と解釈して下さい)であったと公式に認めたと。

事故発生直後は炉心溶融メルトダウン)の危機的な状況を経験したし、原子炉格納容器が破断するのではないかという危機的状況も経験した。しかし、そういう状況は脱した。

まあ、メルトダウンして格納容器も壊れたら既に危機的状況ではない、というのはそれはそうである。壊れていないにしても壊れたと同等なものはこの3週間でばらまいたわけだし。

オールジャパン体制」への疑問符

【4月4日】(震災25日目)

•Tさん 経由のアクセスが多い。と、それはそれとして、

いずれも激烈に重要かつ困難をきわめる問題であり、その解決のために最高の英知を結集していると信じたい。

科学者ならデータに基づいて物事を客観的に判断しないといけないと思う。希望的観測では駄目。今頃になって「試行錯誤で行っている」なんていってる人々の中に英知が結集されているわけはないことはわかる。

•ま、英知を結集したって船が山に登るだけで、もうちょっと違うアプローチが必要だと思いますが。「オールジャパン体制」とかいうものでやって色々大変になった例はいくらでもある。

 第7章の「国策がエースをつぶす?」と内容が重複するが、少々追記したい。ここの記述が、当初、私には意外だったからである。

 私自身のことを記述して恐縮だが、私は大きなチームを組んで研究することが苦手である。最近は国立大学でも外部から予算を取ってくることが求められ、そのために、有力な教員でチームを組んでプロジェクト型の研究を推進したがる傾向にある。私も、しばしば、その中に組み入れられることがあるが、消極的で、あまり役に立っていない。さらにいえば、億を超えるような大型予算が必要な研究に取り組みたいとも思っていない。
 大型予算を取れないダメな研究者だといわれれば反論の余地はないが、本当に大型プロジェクトに取り組みたいのならば、研究所に行けばよいと考えている。大学の良いところは、10年先、20年先を見据えた、それでも成果が出るか出ないかわからないことにも取り組める自由さにあると思っているからである。
 一方、牧野は、私の知る限り、億を超えるプロジェクトを続けてきており、しかも、そのほとんどで、中心的な人物として活躍してきている。
 その牧野が【英知を結集したって船が山に登るだけ】【「オールジャパン体制」とかいうものでやって色々大変になった例はいくらでもある】とコメントしていることが意外だったのである。
 ただし、国策に近いところで活動してきた人物の言葉であり、重みがある。

終わりの見えない事故対応

【4月5日】(震災26日目)

•2号機の漏水が放射能汚染の主因か 基準の750万倍(朝日新聞社ニュース)
2日に採取した1〜4号機の取水口付近の海水の放射性物質を調べた。2号機ではヨウ素131で基準値の750万倍の1立方センチあたり30万ベクレルを検出。1、3、4号機は基準値の35万〜48万倍ほど。東電では、2号機取水口付近の漏れが、海洋汚染の主原因とみている。

1m^3 にすると3E11 Bq なので、もしも高濃度汚染水が 10^13Bq/m^3 程度だったとすると採取した水は 30倍程度しか薄められていなかったことになる。ま、多分もっと高濃度のがでてるんじゃないかなあ。

 4月に入ってから、早い段階で牧野が心配していた汚染水の問題が表面化してきた。
 前日の4日には、「低濃度汚染水」の海洋投棄が始まった。
 原子炉等規制法の64条にもとづく「緊急時の措置」として、経済産業省原子力安全・保安院に報告され、原子力安全委員会から助言を受けたうえで、やむをえない措置として了承されたという。
 当然ながら、漁業関係者や国際的にも、反発の声が上がった。

•千葉の東大柏キャンパスは今日になっても 0.46uSv/h とかで、福島第一から 20-30km 圏のほとんどの地域より高レベルである。

 こちらは「飛び地」である。しばらくして、「ホットスポット」という呼び名が一般にも認識されて、各自治体で「ホットスポット」の調査が行われることになる。

 原発事故は、爆発以降も次から次へと問題が表面化していき、出口の見えない状態が続く。

【4月6日】(震災27日目)

•DoE のページ にある スライド(米国エネルギー省(Department of Ebergy)のホームページ資料より)。こういうのがいまだに日本政府からでてこない時点で何かが既に終わっているわけではありますが、それはそれとして、
 o茨城県北部のデータを見ると、 0.03-0.25mRem/h (=0.3-2.5uSv/h) のポイントが一杯あるけどこれは多分航空機でのサーベイデータではなくて地上のデータ。
 oつまり、航空機のサーベイデータは この辺では色々不足?原発周辺ではよく一致しているように見えるので、スキャン密度の違いのためかもしれない。
 o東京のえらくいろんなところが 0.3uSv/h 以上になってるけど、そんなデータあったっけ?
 oIAEA の避難基準は 6uSv/h くらい相当なので、緑の領域の多分濃度高い半分くらい。
 o福島市の中心から 5-10km 南辺りと思われる場所に高濃度汚染スポットがある。20 uSv/h を超えているように見える(10かも)。地上データはないところ。これ退避しなくていいのか?

•こういう、面的なデータが(信用できる密度で)出れば、 20km とか 30km とかでなくて実際の汚染度合に応じた対応ができるようになる。というか、はじめからそれもやってないといけなかったわけだが、未だに DoE はやってるけど日本政府は動かないという、、、

 米国エネルギー省による東日本における放射線量の分布図である。
 2日後の日誌に関連したコメントを載せている。

•DoE のスライドから放出量を推定。 1uSv/h=20Ci/km^2 で計算。
• 0.3uSv/h 6Ci/km^2 60km*80km=5000km^2 30000Ci
• 2.5uSv/h 50Ci/km^2 60km*20km=1200km^2 60000Ci
• 22uSv/h 400Ci/km^2 40km*5km=200km^2 80000Ci

これを全部足したののさらに2-3倍はあると思うと40万Ci。3/11 の時点では10 倍多かったと思うと 400万Ci。放出された中でこのエリアに落ちたのが 1/10 とするとトータルは 4000万Ci。まあ、そんなものだ。

•放出がセシウムの量で 100万Ci 程度、という感じ(現在まだ半分程度の寄与と思うと)。メドヴェジェフの本によるならチェルノブイリの放出量は 100-300万Ci。

【4月7日】(震災28日目)

•部屋に40Wの蛍光灯が6本ある。240W。半分消えてるが、それでも結構電力的には大きい。 60W 相当タイプ(6-8W)の電球4個くらいで 十分明るくなるんじゃないかな。

 この日を中心に、首都圏の各大学では新年度が開始されている。教育現場でも、夏場の電力不足への対応に追われていた。
 千葉大学においても、土曜に授業を行うことにして、7月第2週で前期が終わるように授業カレンダーが変更された。
 逆に、震災対応で、授業開始を1ヶ月遅らせて5月にする大学もあった。

「レベル7」に進む認識

【4月8日】(震災29日目)

•本震7時間後に燃料露出寸前の状態 福島第一原発1号機(朝日新聞社ニュース)
東京電力は8日、福島第一原発1〜3号機について、3月11日の地震直後の炉内データを公表した。1号機の水位は地震の7時間後、燃料が露出する寸前まで下がっていたことがわかった。

あれ、これ、NHK ラジオでリアルタイムで流してなかったっけ?渋滞の中でずーっとニュース聞いていてものすごく不安になった記憶があるんだけど、、、

 例えば、朝日新聞3月13日朝刊1面の大見出しには「第一 1号機 炉心溶融、建屋損傷」とある。15日には「2号機 炉心溶融 燃料棒露出、空だき」と続く。
 根拠は原子力安全・保安院の見解にあった。事故直後の3月12日午後2時、東京電力福島第一原発1号機で原子炉の心臓部が損なわれる「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発表していた。
 当時の報道の方が、より真実に近い状況に言及していた。例えば、朝日新聞3月13日朝刊1面には、事故の規模として「保安院がレベル4と位置づけている」ことを紹介しながらも、「福島第一原発は今回の事故で、チェルノブイリ、TMI(スリーマイル島原発)事故に続き大事故に加わる。TMIより大きな事故といえるだろう」とコメントしている。スリーマイル島原発事故はレベル5である。

 ところが、数日後には「炉心溶融」の事実が報道から消えていく。どこかで情報統制があったのか、報道が「自粛」してしまったものと思われる。

【4月9日】(震災30日目)

放射能の大半、なお原子炉内に 漏出は1割以下か(朝日新聞社ニュース)なにを今更、的な記事だが、まあ、 世の中そんなものかな。

1〜3号機には緊急停止した時点で、放射性ヨウ素が各130万〜230万テラベクレル(テラは1兆倍)、放射性セシウムが13万〜22万テラベクレルあったと推定できた。

ヨウ素で1億キュリーですね。そんなものであろう。

原子力安全委員会が汚染の拡散予測に使ったヨウ素の大気への推定放出量は、3月12日から24日までに3万〜11万テラベクレルだった。

INES レベル7はヨウ素131相当で数万テラベクレル以上なので、安全委員会的には実はレベル7であると認識しているわけだ。

【4月10日】(震災31日目)

•さて、投票にいこう。どうせ某老人になるわけだが、口先だけでなくてちゃんと脱原発を進めそうな人に投票したほうがまあ気休めにはなる。

 この日は統一地方選挙の投開票日であり、政権与党の民主党が惨敗した。また、「選挙カーの利用を手控えるなど『自粛』ムードに包まれる異例」の選挙戦であったことが報道された。
 主張すべきことができない状況で行う選挙に意味があるのかどうか。「自粛」が必要なくらいなら、延期すればよいようにも思われた。
 唯一、千葉県内で浦安市が、液状化の被害を理由に県議員選挙の延期を要望し、混乱を招きながらも、投票の実施を延期した。

 「未曾有の大災害」と口にしながらも、臨機応変で柔軟な対応が全くといってよいほど見られなかった1ヶ月であったように感じられた。

【4月11日】(震災32日目:1ヶ月)

•寒いね。
•筑波にいるわけだが、地震が、、、なんか沢山くる。
常磐道通行止め、、、

 3月11日に起きた大地震からちょうど1ヶ月のこの日、福島県茨城県震度6弱を記録する大きな余震が発生した。余震というにはあまりに大きな地震で、今回の大震災を象徴していた。

原子力工学研究者からのメッセージ。情報ありがとうございます>教えてくれた人。
•しかし、

この厳しい事実を謙虚に受け止め、いっそう高いレベルで教育、研究並びに社会貢献に関する責務を果たすために、事故の終息とその後の措置に向け、持てる力量を最大限に発揮することを惜しみません。

が、

これまでに放出された放射性物質の量を定量的に評価することは進行中ですが、現在も圧力容器内に相当量の放射性物質が残っています。

と。進行中ですか。そうですか。でもって、何故図が安全基盤機構の例のレポートから?

【4月12日】(震災33日目)

•事故評価 最悪のレベル7へ(NHKニュース)。1ヶ月(まあ、大きな放出は3/14 以降だけど)たってやっと、、、

東京電力福島第一原子力発電所で相次いで起きている事故について、経済産業省原子力安全・保安院は、広い範囲で人の健康や環境に影響を及ぼす大量の放射性物質が放出されているとして、国際的な基準に基づく事故の評価を、最悪の「レベル7」に引き上げることを決めました。「レベル7」は、旧ソビエトで起きたチェルノブイリ原発事故と同じ評価になります。原子力安全・保安院は、12日、原子力安全委員会とともに記者会見し、評価の内容を公表することにしています。
レベルが引き上げられる背景には、福島第一原発でこれまでに放出された放射性物質の量が、レベル7の基準に至ったためとみられますが、放射性のヨウ素131を、数十から数百京(けい)ベクレル放出したというチェルノブイリ原発事故に比べ、福島第一原発の放出量は少ないとされています。原子力安全・保安院は、12日、原子力安全委員会とともに記者会見し、評価の内容を公表することにしています。

まだ少ないといってるのかと思うが、これはつまり現実認識のずれが調整される時定数が 1ヶ月のオーダーということなんだろうな。

 原発事故が発生して1ヶ月、日本の公式見解として「レベル7」という自己評価が発表された。
 この後、様々な意見が飛び交うことになる。様々な研究結果も提示されている。しかし、それらを本書で扱うつもりはない。
 社会が硬直した中において、科学者の理性とは何であり、どこにあったのか。
 最後は牧野の言葉で結びたいと思う。

• 今回、現実認識の遅れの時定数によってアクターを分類できるのかも。
• 1ヶ月以上: 東電
• 1ヶ月程度: 保安院
• 2週間程度: 普通の物理学者

自分がどこかは知らん。

 もちろん、事故発生直後から認識していたのであり、科学者としての圧倒的な自負が込められている。
 語弊を承知で感想を述べれば、純粋に格好良いセリフである。

(終)