初めての「栄光なき天才たち」

 今から26年前の1985年12月25日、後に「栄光なき天才たち」として連載される作品の第1話を書き上げた。
 2年連続して「青年漫画大賞原作部門」を受賞(佳作と準入選)したことで、編集部から何か「読み切り」を書いてみないかと言われていた。
 私の方は、「読み切り?ふざけるな!」という思いだった。連載を目指して書き綴った。
 記念すべき第1話は「エヴァリスト・ガロア」だった。ガロアで始まり、アーベルで終わる構想だった。
 年が変わって1986年1月5日に「エリシャ・グレイ」、3月11日に「古橋広之進」、3月22日に「鈴木梅太郎」、4月19日に「エンリコ・フェルミ」をそれぞれ脱稿した。
 そして、念願かなって、5月、連載がスタートした。
 ところが、第1話はガロアではなく、グレイが選択された。ガロアは「暗い」という理由からだった。第2話は古橋となった。外国人が続くのでは、読者がついてこられないという理由だった。そして3話目にガロアの登場となった。

 私はガロアの「群論」を授業で知ったが、熟知できるほど優秀ではなかった。
 しかし、自分の中でくすぶっていた当時の熱い思いを、ガロアの人生に重ねたのは間違いなかった。「栄光なき天才たち」の原点が、そこにあった。

 23歳のクリスマスの思い出である。