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「サイエンスインカレが卒業研究に一石を投じる期待」(2013年3月26日初稿;3月30日改定稿掲載)

3月最初の週末にサイエンスインカレの研究発表会が開催された。インターハイといえば全国高等学校総合体育大会(略して高校総体)のことで、皆さんもよくご存じだろう。その大学版がインカレ(インターカレッジ)であり、科学技術の分野で競い合う大会がサ…

「エレベーター事故はなぜ再発したのか」(2013年3月21日初稿;3月26日改定稿掲載)

2006(平成18)年6月3日、男性がエレベーターから降りようとしたところ、戸が開いたままの状態でエレベーターが上昇し、乗降口の上枠とかごの床部分の間に挟まれて亡くなるという痛ましい事故が起きた。その公判が、6年9カ月後の今年3月11日に…

「4Kテレビに思う「技術力の本質」」(2013年2月12日初稿;2月15日改定稿掲載)

最近、4Kテレビが話題である。総務省も先日、4Kテレビ用の放送を2年前倒しして2014年7月に開始すると発表した。世界初になるという。Kはキロ(1,000)を表す。4Kテレビは、正確には4K2Kで、約4,000×2,000の画素数(解像度)をもつ。現在主流のフルハイビジョ…

「公務員の早期退職はなぜ悪いのか?」(2013年1月27日初稿;1月31日改定稿掲載)

下村博文文部科学大臣が「教員の駆け込み退職に苦言」というニュースが流れた。これは「パワーハラスメントなんじゃないかな?」と思った。民間の企業で、働けば働くほど給料が減ることが明らかな上で働かせ続けたら、労働基準法で引っかかるように思うのだ…

「スパコン報道にみる科学技術を伝える難しさ」(2013年1月22日初稿;1月25日改定稿掲載)

私事で恐縮であるが、年末年始は今春に刊行予定の技術書の編集に追われた。グラフィックス処理専用に開発されたプロセッサGPU(Graphics Processing Unit)を用いた数値計算の入門書である。研究グループで分担執筆し、私は編者として取りまとめを担当してい…

WEBRONZA

今年度、朝日新聞WEBRONZAの契約は更新しなかった。 毎月1〜2本、時事問題に関する記事を書くのは、推敲を重ねるタイプの私にとっては結構大変だった。自分の意見を世間に問うことができる機会はそうそうなく、残念な思いもある。ただ、自分自身にとっての優…

「東大の休学新制度に対する根本的疑問」(2012年11月17日初稿;11月28日改定稿掲載)

東京大学の特別休学制度(FLY Program)のニュースに接して、脱力感のような失望をおぼえた。このプログラムは、新入生を対象に1年間休学させてボランティアや海外留学を行わせて「タフでグローバルな人材を育成する」という制度で、「文部科学省によると、…

「京が示したスパコンの実力」(2012年11月19日初稿;11月21日改定稿掲載)

2012年11月期のスパコンランキング「TOP500」が発表になった。6月期1位のSequoia(IBM)、2位の京(富士通)がそれぞれ2位と3位に後退し、1位に立ったのは米国オークリッジ研究所に納入されたTitan(Cray)だった。Titanには、最新のGPU(グラフィックス・プ…

ノーベル賞続出でも改革し続ける教育行政:「Vision」はどこだ?(2012年10月25日初稿;11月5日改定稿掲載)

山中伸弥教授のノーベル賞受賞決定で、2000年以降の日本の受賞者は、現在は米国籍になっている南部陽一郎博士を含めて11人になった。列挙すると、次のようになる。 2000年 白川英樹(化学賞) 2001年 野依良治(化学賞) 2002年 小柴昌俊(物理学賞)、田中…

「宇宙月間に考える技術者の倫理〜大事故の背後に共通課題が見える」(2012年9月13日初稿;9月19日改定稿掲載)

9月12日は「宇宙の日」だ。この日から10月上旬の「世界宇宙週間」までの1カ月は「宇宙の日ふれあい月間」とされ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)など関係機関で様々な催しが行われている。宇宙ファンにとっては楽しみな時期である。 宇宙開発には明るい未来を…

「インターネットの進展が人間の知的能力を劣化させる可能性」(2012年7月29日初稿;8月2日改定稿掲載)

ある講演会で、著名な科学者が「好奇心」について、次のように語っている。 「いまの世の中は、情報化時代というのだそうですけれど、非常に情報量が多い。われわれは、とにかくこの情報の波に巻き込まれてしまう。実際、私の専門の物理学においても、研究の…

「70年前に予測されたインターネット社会の爆発的発展」(2012年7月20日初稿;7月30日改定稿掲載)

インターネットの窓口の役割を果たすポータルサイト。その大手企業である米国ヤフー社の最高経営責任者(CEO)に、同分野でシェア1位に成長した米国グーグル社の元副社長マリッサ・メイヤーが就任した。グーグルの20番目の社員で女性技術者、しかも37歳とい…

「2位になった「京」の本当の評価」(2012年6月22日初稿;26日改定稿掲載)

2012年6月期のスパコンランキング「TOP500」が発表になった。米国IBMのSequoiaが1位になり、日本の「京」が2位に転落したと報じられた。転落というよりも、今も2位にランクインしていることは、称賛されるべきことである。 ただし、「京」の真価が問われるの…

「終わりなき制度改革が教育の現場をダメにする」(2012年6月2日初稿;7日改定稿掲載)

文部科学省は、6月に入り、高校を3年未満で卒業できる早期卒業制度の導入、国立大学の再編(読売新聞のニュースなので、適宜、変更して下さい)と、矢継ぎ早に制度改革を打ち出してきている。昨年来議論になっている大学の秋入学と同様、グローバル化への対…

「外村彰さんが示した日本企業の研究力」(2012年5月8日初稿;14日改定稿掲載)

日本の企業研究所の巨星の一人、外村彰博士(日立製作所フェロー)が先日他界した。ホログラフィー研究の先駆者の一人である。私自身もホログラフィーを研究しており、面識があるわけではないが、先達の功績を紹介し、追悼したい(以下では、敬称を略す。ご…

2011年度WEBRONZA

2011年度、WEBRONZAに寄稿した論考は、以上の14本です。

「東京を救ったのは菅首相の判断だったのでしょうか?(2012年04月03日)」の初稿

東京を救ったのは菅首相の判断だったのでしょうか? (2012年3月26日脱稿) 3月9日付で公開された竹内敬二さんの論考「東京を救ったのは管首相の判断ではないか」(http://astand.asahi.com/magazine/wrscience/2012030800005.html?iref=webronza)が、この…

「米原子力規制委員会の福島事故議事録からの教訓(2012年02月29日)」の初稿

福島原発事故−判断しないよりまし (2012年2月23日脱稿) 2月21日、米原子力規制委員会(NRC)は、福島第一原発の事故発生から10日間の議事録を公開した。1〜3号機のメルトダウン(炉心溶融)や4号機の使用済み核燃料プールの危険性などが指摘されて、日本政…

【後記】「体験してわかった高齢者医療の大問題−気管切開と胃ろう」

関連記事がニュースになっていますね。 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120627-OYT1T01056.htm?from=tw

「体験してわかった高齢者医療の大問題−気管切開と胃ろう」(2012年02月15日)の初稿

老年医学会「立場表明2012」に高齢者医療を考える (2012年2月5日脱稿) 1月28日、日本老年医学会は「立場表明」(http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tachiba/jgs-tachiba2012.pdf)の改定版を公表した。高齢者の尊厳や家族の負担に配慮されており、少なから…

【後記】「秋入学への全面移行に反対する」

賛否はいろいろあると思いますが、関連して、産経新聞の「金曜討論」というコーナーで取り上げられました。 http://sankei.jp.msn.com/life/news/120302/edc12030208180000-n1.htm

「秋入学への全面移行に反対する(2012年01月27日)」の初稿

秋入学の議論は教育上の本質となり得ているか? (2012年1月22日脱稿) 東大が秋入学へ全面移行しようとしているニュースが各報道機関でいっせいに流れた。東大が4月入学をやめて秋入学にすることは、東大の問題であるので口をはさむつもりはない。ただ、な…

「SPEEDIのデータ非公開に翻弄された研究者たち 2011年12月28日」の初稿

活かされなかったSPEEDI (2011年12月24日脱稿) 12月23日、文部科学省は、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」(http://www.bousai.ne.jp/vis/torikumi/index0301.html)のデータ公表が遅れたことについて、「当初から公表する必要があ…

「ゴール到達寸前に来た素粒子物理学―ヒッグス粒子までの道 2012年01月06日」の初稿

ヒッグス粒子にみる20世紀物理学の系譜 (2011年12月16日脱稿) ヒッグス粒子の存在が示唆された。20世紀に構築された素粒子物理の「標準理論」が完成する日も近いようである。 学生の頃、私は、南部陽一郎の書いた「クォーク―素粒子物理の最前線」(1981年…

「日本のスパコンがゴードンベル賞を独占した意味 2011年11月22日」の初稿

スパコン世界一のゴードンベル賞 (2011年11月19日脱稿) 2011年は、6月期に続き、11月期も「京」がスパコンランキング「TOP500」(http://www.top500.org/lists/2011/11)で1位に輝いた。1秒間に1京回の演算性能(10ペタフロップス)を記録して、文字通り「…

「「人工知能」研究の創始者ジョン・マッカーシーを追悼する 2011年11月01日」の初稿

人工知能の創世記を築いたジョン・マッカーシーを追悼する (2011年10月8日脱稿) 機械は知能を持てるだろうか?専門家でなくても興味をひかれる話題である。 人工知能(AI: Artificial Inetligence)という言葉を最初に提唱し、AI研究を先導して、1971…

「IT社会を築いたもう1人の巨人デニス・リッチーを悼む 2011年10月21日」の初稿

現代のIT社会を築いたデニス・リッチーのC言語 (2011年10月15日脱稿) コンピューターは何でできている? 演算をするプロセッサに、メモリやハードディスクの記憶装置、キーボードやマウス、それにディスプレイ、それから…。 それは答えの半分でしかない。…

「アップルに始まりアップルに戻った36年:コンピューター史の中のジョブズ 2011年10月12日」の初稿

パソコンの時代:アップルに始まりアップルに戻った36年 (2011年10月8日脱稿) アップル社は、時価総額で、昨年、揺るがない地位にあったマイクロソフト社を抜いてIT業界のトップに立ち、今年の8月には全米企業の頂点に立った。その同じ8月に、創業者のステ…

コンピュータ界の巨人の逝去

2011年10月は、コンピュータ史上に名を残す3人の巨人が相次いで他界しました。WEBRONZAで、それぞれの追悼記事を書いたので、続けて掲載します。

【後記】「光速を超えたニュートリノ、決着をつけるのは誰か? (2011/10/01)」

先日、京都で行われた第25回ニュートリノ・宇宙物理国際会議(NEUTRINO2012:2012年6月3日〜9日)で、ニュートリノが光速を越えた実験結果が誤りだったと報告されましたね。http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG08013_Y2A600C1000000/ など。