杉本先生の逸話

 牧野さんが「本の御礼」を見てくれてコメントをしてくれました。ありがとうございます。
http://jun-makino.sakura.ne.jp/Journal/journal-2014-04.html#15

# 牧野さん
「感想の2つめは、牧野さんの言動が師匠の杉本先生にかぶって見えることです。ただ単に私の印象です。深い意味はありません。」浅い意味はあるんだなおいみたいな。

 ここを読んでいる人の多くは牧野さんにそれなりのイメージを持っていると思います。そこで、今回は、杉本先生の印象をお伝えします。拙著からの引用です。

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 杉本は、例えば、天文学の研究会などでは一番前の席に陣取り、半身の姿勢をとることが多かった。そして、一通り講演を聴き終えると、いきなり核心をつくような質問をした。
 講演者がまだ若いと、答えられずに黙ってしまうことがある。
 すると杉本は、「それはね、こういうことや」と笑顔で口を開いて、半分は講演者に向かって、半分は聴衆に向かって、その解答を解説した。
 杉本は講演を聴きながら、問題点を理解した上で、その場で解答まで頭に浮かぶことがしばしばあった。そんなとき、講演者や聴衆は、杉本の頭の回転の速さに感嘆したという。
 杉本の聡明さは、ときとして専門分野を超えた。ただし、分野を超えた場合、ふつう専門家からの激しい反発を受け、必然的に論争になる。実際に杉本は、いくつかの論争を経験している。例えば、こんな逸話が残っている。
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(中略)

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 畑違いの杉本に相談した。
「これは彼の著書なんだけれど、ぼくにはさっぱりわからないんだ。杉本さん、ちょっと読んでみてくれないか?」
 それは経済学の本ではあったが、数式がちりばめられていて、その教授は、その数式の意味がわからないと言った。
 杉本はその本を読んでみた。「美文」だと思った。しかし、そこで使われている数学には納得いかないものがあった。杉本は、そのことを教授会の席で話題にした。学生時代に経済学に夢中になっていた杉本の経済学論は説得力を持った。
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(後略)

 知る人ぞ知る逸話ではあるけれども、ここでは詳述しないでおきます。

 頭脳明晰な上、自分の専門にとらわれずに発言もする。衝突も辞さない。そういう一面が杉本先生にはありました。

 だから…という話は、またの機会にしたいと思います。

 振り返れば3年半しか在籍していませんでしたが、熱かった杉本研究室時代のことも、折りにふれて書いていければと思っています。