牧野さんへ本の御礼

 昨年10月に「原発事故と科学的方法」(岩波書店)を牧野さんが出版されました。その際、私にも1冊送ってくれて、メールでは御礼をしました。
 このブログでも御礼の書評を書こうと思ったのですけど、当時の反響が大きく、気圧されて、書けませんでした。ネットの破壊力(表現が適切ではないかもしれないですが)はすごいなと、あらためて感じました。ブログ内でも何度か書いていますが、私はそういうネット文化に馴染めないでいます。

 ずい分遅くなってしまいましたが、謹呈頂き、ありがとうございました。

 書評というわけではありませんが、感想を2つほど。

(1)当時の牧野さんの日記を精読(解読?)して、それを一つの軸として、私は「理性の資質」を執筆し、本ブログで掲載しました。その序論で、次のような記載をしました。

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 私は、牧野教授の公開用日誌を精査してみて驚いた。正直にいえば、少なからぬショックを受けた。試算の過程があまりにシンプルだったのである。例えば、これを問題として解かせれば、ちょっと物理が得意ならば、高校生でも牧野教授の答えと同じ結果を導ける程度のものである。
http://d.hatena.ne.jp/yayoi_2011/20111005/1317827674

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 気を付けなければいけないのは、だからといって、高校生が同じことをできたかというと、そうではないことです。必要なのは理系的な素養であり、その本質は、通常、大学以上の高等教育で身に付いていくべきものです。
 身近な例をあげると、円周率πがあります。少し前の指導要領では「3」として扱うことになり、物議を醸しました。πは小数点以下が無限に続く無理数なので、整数で打ち切るのは教育上良くないという議論は置いておくとして、実際にπを使う場合を考えます。それは扱う現象によって大きく異なります。通常の数値計算では「3.141592」程度以上のかなり正確な値を用います。だけれども、「3」で良い場合も多くあります。さらにいえば、「1」と近似しても十分な場合もあります。そういうことが抵抗なく頭に入ってくる(適材適所で使い分けられる)ことなどが、理系的な思考の要素としてあげられます。
 牧野さんの日記や本には、そういう思考が(ごく普通に)出てきますが、身に付けるのは結構大変です。

(2)感想の2つめは、牧野さんの言動が師匠の杉本先生にかぶって見えることです。ただ単に私の印象です。深い意味はありません。