還暦 - 耳順(じじゅん)

 60歳になった。よくここまで生きてきたなと自分を褒めてあげたいと思う。感慨深い一方、60歳の実感はなかなかわいてこない。ただ、一日一日定年退職が近づいてくるという現実感はある(私の勤務先の定年は65歳である)。

 年齢を表す言葉として論語に「吾、十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑はず。五十にして天命を知る。六十にして耳順ふ。七十にして心の欲する所に従へども、矩を踰えず」とある。60歳は「耳順ー何を聞いても素直に受け入れることができるようになった」年齢とのことだ。

 「そうだな」と思うこともあれば、「そうかな?」と考えることもある。

 

 今日は卒業生からの贈り物「祝還暦」という日本酒を頂いている。赤いちゃんちゃんこにかけてお洒落な色合いである。金箔入りというのもお祝いならではという感じだ。いくつになっても誕生日のお祝いは嬉しいし、ありがたい。

祝還暦(白露酒造 金箔入り純米大吟醸

 たまたま日が重なっただけではあるが、誕生日の今日、若かりし頃の研究がテレビ放映された。

 BSフジ 2022年4月24日(日) 13:35~14:04

 『ガリレオX』第265回「GRAPE 天文学を変えた計算機」

https://www.bsfuji.tv/galileox/pub/265.html

 30年以上前の研究成果を取り上げてもらえて、こちらも嬉しい限りである。
 1週間後に再放送もあるということなので、天文学や計算機科学に興味のある人はご覧頂ければ幸いである。
 2022年5月1日(日) 11:30~12:00(再)

 

 60歳を機に日記(ブログ)を再開しようと記事を書いている。これからは最後にちょっとした言葉を添えたいと思う。初日は僭越ながら、自分のホームページから。

 「夢を持てることは一つの才能であり、夢を追い続けることは一つの勇気であると思う。」

https://www.te.chiba-u.jp/lab/brains/itot/work/genius/genius.htm

専門書の重版

 下馬場さんと共著で書いたホログラフィの専門書(大学3年生以上を対象)が重版しました。ホログラフィの研究者はそれほど多くないので、大変嬉しいですね。ありがとうございます。

ホログラフィ入門 コンピュータを利用した3次元映像・3次元計測 (KS理工学専門書)

ホログラフィ入門 コンピュータを利用した3次元映像・3次元計測 (KS理工学専門書)

http://d.hatena.ne.jp/yayoi_2011/20170808/1502200158

Nature Electronics

四半世紀(25年)続けてきたホログラフィ専用計算機 HORN の最新成果が Nature Electronics 4月号に掲載されました。とても嬉しく思っています。

https://www.nature.com/natelectron/

研究成果は表紙絵にも採用されて、編集部がつけてくれたタイトル「Video holography lifts off」が格好良くて、感慨もひとしおです。

特別な一夜となりました。

「楽して生きる」「楽しく生きる」

 年度の終わりになると、卒業していく学生との思い出が自然と浮かんでくる。
 1人の学生が1年ほど前に、こんなことを言った。
「ぼく、楽して生きていきたいんです」
 就職活動を直前に控えて、私が「希望の会社は?」と聞いた答えだった。
 ちょっと面食らったが、いろいろな話をした。
 基本的にはまじめな学生で、きちんと就職して、この4月から社会人になる。

 ふと、そんなことを思い出して、二つの言葉を並べて書いた。

・楽して生きる
・楽しく生きる

 一文字しか違わないのに、意味合いが全然違う。
「楽して生きる」ためには、環境的な要素が必要になりそうだ。受け身的である。
「楽しく生きる」ことは、主体的にできそうである。

 人生は楽しいことばかりではないけれども、前向きでありたい。
 今年の卒業生には、そんな言葉を贈りたいと思う。

AKITA TOP COMICS500 栄光なき天才たち

 8月31日(木)に1冊目、9月28日(木)に2冊目が発売されました。
 秋田書店さん、沢さん、どうもありがとう!

 読者の皆様、よろしくお願いいたします!

ホログラフィ入門

 下馬場先生と共同で執筆した「ホログラフィ入門」(講談社)が8月5日に発売されました。これまでのホログラフィ関連書籍との違いは、ホログラフィとコンピュータに焦点をしぼったところです。これまで研究してきたことのまとめにもなっています。4000円と、ちょっと高いですが、ホログラフィに興味を持っている人の導入になれば幸いです。

ホログラフィ入門 コンピュータを利用した3次元映像・3次元計測 (KS理工学専門書)

ホログラフィ入門 コンピュータを利用した3次元映像・3次元計測 (KS理工学専門書)

将棋電王戦の憂鬱(4)

 2013年の第2回将棋電王戦から、毎年この時期に感想を書き続けて5年になりました。今回で最後になると思います。

 先ほど、NHKスペシャル人工知能 天使か悪魔か 2017」が放映されました。その中で佐藤天彦名人は次のように語りました。
「これで、自分が背負っていた人類のコンピューター将棋に対する戦いがひとつ区切りになる」
 印象的な言葉でしたね。
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/46/2586947/index.html

 私は、チェスや将棋や囲碁などの知的文化において、コンピュータの力で可能性を広げていくことに懸念を持っています。せっかく人間が創り出してきた知的文化を人間自ら手離してしまうことになるように思えたからです。
 今年は囲碁も含めて、人工知能AIが人間を圧倒しました。長く記憶される年になるかもしれません。
 今後の動向についても見守っていきたいと思っています。

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将棋電王戦の憂鬱(1)
http://d.hatena.ne.jp/yayoi_2011/20130501/1367421092
将棋電王戦の憂鬱(2)
http://d.hatena.ne.jp/yayoi_2011/20140322/1395506084
将棋電王戦の憂鬱(3)
http://d.hatena.ne.jp/yayoi_2011/20150419/1429412105
永遠の一手 − 2030年、コンピューター将棋に挑む
http://d.hatena.ne.jp/yayoi_2011/20160527/1464322904

(補記)
 AIに関しては、報道もあおりすぎのような気がします。

 将棋とは離れますが、私が最初にニューラルネットワーク(今の言葉ではAIの方がわかりやすいですね)のハードウェア化を試みたのは、1990年代後半です。その頃は計算機の能力も不足していて、研究は進展せずに止めてしまいました。
 それから20年、AIの開発は驚くほど容易になりました。私たちの研究グループでも、現在では、一部で、次世代技術の研究開発にAIの手法を取り入れています。うまくいくかは、まだわかりません。

 AIは、やはりツールだと思います。それ以上でも以下でもありません。ツールですから、使う人によって、有用にも悪用にもなり得ます。
 現在の状況は、AIという言葉が一人歩きしていて、「何だかよくわからない」ために、過度な期待や過度な心配がされているように思います。