将棋電王戦の憂鬱(4)

 2013年の第2回将棋電王戦から、毎年この時期に感想を書き続けて5年になりました。今回で最後になると思います。

 先ほど、NHKスペシャル人工知能 天使か悪魔か 2017」が放映されました。その中で佐藤天彦名人は次のように語りました。
「これで、自分が背負っていた人類のコンピューター将棋に対する戦いがひとつ区切りになる」
 印象的な言葉でしたね。
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/46/2586947/index.html

 私は、チェスや将棋や囲碁などの知的文化において、コンピュータの力で可能性を広げていくことに懸念を持っています。せっかく人間が創り出してきた知的文化を人間自ら手離してしまうことになるように思えたからです。
 今年は囲碁も含めて、人工知能AIが人間を圧倒しました。長く記憶される年になるかもしれません。
 今後の動向についても見守っていきたいと思っています。

##
将棋電王戦の憂鬱(1)
http://d.hatena.ne.jp/yayoi_2011/20130501/1367421092
将棋電王戦の憂鬱(2)
http://d.hatena.ne.jp/yayoi_2011/20140322/1395506084
将棋電王戦の憂鬱(3)
http://d.hatena.ne.jp/yayoi_2011/20150419/1429412105
永遠の一手 − 2030年、コンピューター将棋に挑む
http://d.hatena.ne.jp/yayoi_2011/20160527/1464322904

(補記)
 AIに関しては、報道もあおりすぎのような気がします。

 将棋とは離れますが、私が最初にニューラルネットワーク(今の言葉ではAIの方がわかりやすいですね)のハードウェア化を試みたのは、1990年代後半です。その頃は計算機の能力も不足していて、研究は進展せずに止めてしまいました。
 それから20年、AIの開発は驚くほど容易になりました。私たちの研究グループでも、現在では、一部で、次世代技術の研究開発にAIの手法を取り入れています。うまくいくかは、まだわかりません。

 AIは、やはりツールだと思います。それ以上でも以下でもありません。ツールですから、使う人によって、有用にも悪用にもなり得ます。
 現在の状況は、AIという言葉が一人歩きしていて、「何だかよくわからない」ために、過度な期待や過度な心配がされているように思います。