編集長 沢考史

 昨年の今日、6月9日、「永遠の一手」の連載が始まりました。大学入学時の同級生だった沢さんとの念願の一作でした。沢さんは先日、編集長を勇退し、異動となりましたので、直接編集を担当してもらうのは最初で最後の作品になりました。ギリギリ間に合ったという感じです。

 私の手元には、秋田書店に就職が決まった年から今年までに届いた沢さんからの年賀状が22通、残っています。年頭の短い言葉ですが、まんが編集者としての熱い思いが伝わってきます。続けて眺めてみると、一編の作品のようです。毎年、年賀ハガキいっぱいに書いてくれているのですが、ここでは文章の一部を抜粋してご紹介します(私信なのでそのまま公開というわけにはいきませんが、概要ならOKという承諾を沢さんからもらっています)。

1989年
 迷走せる就職活動の結論として、来春より秋田書店にてまんが編集をやっていくことにしました。まんがに取り組んでみるつもりです。いずれ先達の教えを乞いに尋ねたいものだと思っています。

1990年
 一年目の去年は、右も左もわからず、忙しくて、伊藤ジーチャンにアタックをかける余裕がまるでありませんでした。
 ジーチャンの創るような作品と、いつか仕事でつきあいたいと思っている今日コノゴロ…

# 編集者となった沢さんは、毎年、年頭で、私に対してまんがの仕事を誘ってくれました。社交辞令も多分にあったと思いますが、嬉しかったですね。その部分を抜粋します。

1993年
 力を貸してホシー!!と本気で思う私です。ヤイ!!まんが書け!!なんて、ともかく本年もよろしく!!

1995年
 研究は順調?まんがの方はいかがですか。

1996年
 学業も楽しいでしょうが、マンガ業も楽しいですよね!せっかくの才能がもったいない。何かやろーよ!!

# この年、私はコンピュータ史に関するノンフィクション漫画「BRAINS」の原作を書きました。少年誌向けではなかったので、少年チャンピオンに在籍していた沢さんには依頼できず、集英社の青年誌ビジネスジャンプのお世話になりました。

1997年
「BRAINS」拝見しました。ご活躍を知ってうれしかったです。

1998年
 昨年10月、異動で『ヤングチャンピオン』に移りました。(中略)まんがの仕事はいかがですか。一緒に仕事できたら面白いんだがなぁ…

#「BRAINS」の執筆直後に青年誌に異動とは…という感じです。

2000年
 力を借りたいと願いながら、そこまでの状況を創り出せなかった99年でした。うー。(中略)一度時間くださいな!!

2001年
 8月に創刊した「チャンピオンRED」というコミック誌で編集長となり、脳ミソ爆発モードで1年を終えました。今こそ伊藤くんの力にすがりつくタイミングなのでは?とも思ったりします。

# その後、2006年に、沢さんは少年チャンピオンの編集長になりました。

2007年
 昨年1年間編集長を務めた小誌週刊少年チャンピオン(中略)力を貸してくれるとありがたいのですが。

2008年
 果たせなかった“ご一献”、ぜひ今年こそは!!

2009年
 なんとか今年こそ、お目にかからねばー!!

2010年
 伊藤氏の目から現在の漫画界がいかに見えているか、ぜひうかがいたいです!!

2011年
 お力をお借りしたく、本年こそ!

2012年
 今年こそ!!

# そして、2014年、私の方から「永遠の一手」の元原稿を送りました。経緯については以前にお話しした通りです。

http://d.hatena.ne.jp/yayoi_2011/20161209/1481241675

2015年
 ついに今年!
 早々にお目にかかるのを楽しみにしております。

2016年
 年明けには第1話出来上がる…はず!!
 いずれにせよ、今年!!よろしくお願いします!!

2017年
 昨年はホントーーに良い仕事をさせていただき大感謝です
 近々飲みましょう!!未来の話もまた!!

##
 そして、沢さんは編集の仕事を離れました。

 振り返ってみれば、あの日あの時が最後のチャンスでしたね。沢さんに原稿を送って本当に良かったと思っています。当然ながら、感謝しているのは私の方です。

 今後は、もっと大きな形で一緒に仕事ができればと、個人的には思っています。