3年越しの掲載

 少年チャンピオン編集長の沢さんが興味を示してくれて、3年越しの掲載が実現しました。
 時系列に沿って、沢さんとのやり取りを示しておきたいと思います。メールの文章は、挨拶文やプライベートな内容などは、適宜、省略しています。

・2014年10月8日 原稿送信(伊藤→沢さん)
・10月12日 返信(沢さん→伊藤)

・10月23日 第1回打合せ

On 2014/10/24 11:02, Sawa wrote:
> 伊藤様
>
> 原作の方、大大大期待しております。
> 4人の天才をかっこよく深めて描き、3〜4話の構成にしていただける。
> もう満点の嬉しさです!!
> 楽しみです!!!

On 2014/10/27 15:01, Sawa wrote:
> 伊藤智義様
>
> 父と食事をする機会があったので、伊藤さんの企画を話してみましたところ、大
> 変喜んで、ぜひ実現するべきと、やたらハッパをかけられてしまいました。
> のんきなおっさんであります。
>
> 既に若いプロ棋士は棋力を上げるためにコンピュータを活用するのは常識となっ
> ていること。
> 親父の感じているところでは、コンピュータ対名人の対局も近い将来(来年とか
> 再来年とかいうレベルで)避けられない状況にあること。
>
> てなことがあり、今やる意義が大いにあるとノリノリでした(笑)
>
> でも、まあ実際そうでしょう。
> 私もそう思います。
>
> 取材など必要であれば親父人脈も活用して、充実させたいです。
>
> 「コンピュータの支援を受けて棋士が棋力を上げる」というあたりのリアリティ
> は作品に大事なのかなという気もします。

・沢さんのお父さんは、NHKチーフディレクターだった人で、長年にわたって将棋番組を担当していました。「NHK杯テレビ将棋トーナメント」を取り仕切っていた人です。観戦記も書かれていました。1991年には第3回将棋ペンクラブ大賞も受賞されています。沢さんのお父さんからの激励は、大変嬉しく思いました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/将棋ペンクラブ大賞

On 2014/12/09 12:38, Ito Tomoyoshi wrote:
> 沢様
>
> 3〜4話でということでしたが、5話での構成になってしまいました。
> すみませんが、一度、これでお送りいたします。

On 2014/12/15 20:48, Sawa wrote:
> 伊藤智義様
>
> 原稿拝読させていただきました。
>
> 大変豊かに改稿なされたと、感激しております。
>
> テーマにおいては、将棋の魅力を「人間対コンピューター」の構図から「人間対
> 人間」に「引き戻す」可能性がよりはっきりと示されてダイナミックです。
>
> キャラクターにおいては一郎のべらんめえな強さや、康晴の無邪気と悲しみそし
> て歴史的な洞察力が強調されて、それぞれ魅力が大いに増していると思いまし
> た。(プログラミング能力と棋力の違いもハッキリと示され驚きがあります)
>
> 少々気になっている所としては、「将棋ソフトの支援を受けて強くなる」の「失
> 敗例」は今回ハッキリ描かれて面白かったのですが、その一方、前提となる「一
> 般的な成功の例・リアルな未来の将棋トレーニング法」のイメージがややボンヤ
> リしてわかり難いか、というような点でしょうか。
>
> ともあれ、基本的に今回いただいたこの構成で、来年、勝利の作品作りに取り組
> めるとワクワク!
> 今から力満ちて来ています!!

・このメールの件名は「豊かになった作品!喜びをお伝えしたあああい!」と付いていて、さすがだと思いました。沢さんは書き手のやる気を引き出すのが上手ですね。実際に、大変嬉しく思いました。

On 2014/12/16 14:11, Sawa wrote:
> 伊藤様
>
> いいですねえ!!!
> 「コンピュータと人間のタッグ」のイメージが少年誌的バトルの中で明確になっ
> ていくというのは、とても面白いと思います。
> 可能であれば、ぜひご調整お願いいたします。
>
> 当方、作画家の選定など、できるところを、できるだけ進めておきます。

・2014年が終わり、2015年になりました。 沢さんから、作画家候補の相談が届きました。

On 2015/01/11 16:49, 沢 考史 wrote:
> 伊藤智義様
>
> 作画家候補として、あるマンガ家の方との話し合いを進めていたのですが、一応、私から伊藤さんにご相談できる材料を手にすることが出来ました。

・2015年1月16日 第2回打合せ
 沢さんから、松島さんの画を何点か見せて頂きました。私の方に異存はありませんでした。

On 2015/02/08 10:50, 沢 考史 wrote:
> 伊藤智義様
>
> 前回お目にかかった折にお話した松島幸太朗さんに原作を見せ、ぜひやってみた
> いとのお返事をもらいました。
> ガッツリ進めていきたいと思います!

・松島さんからもOKが出て、画を描いてもらうことが決まりました。

On 2015/02/11 16:07, Ito Tomoyoshi wrote:
> 沢様
>
> ご指摘にしたがって、改稿してみましたので、お送りします。
> 一読して頂き、さらに気付いたことがありましたら、ご遠慮なく、
> ご指摘下さい。
>
> 独自に変更したところもありますので、変更点を列挙します。
>
> ○タイトルについて(要ご相談)
> より現実的に、2040年を2030年に変更しました。
> これは最初の打合せで出されていた課題です。
> 掲載が近くなってきましたので、まじめに考えたいと思います。
> 第1話には影響しませんが、第2話以降では時系列のすり合わせが
> 必要になります。
> それに合わせて、年齢設定を変更しました。
> 翔太は17歳(高校生)ではなく、14歳(中学生)で登場することに
> なると思います。

少年チャンピオンでの掲載が決まって、沢さんの指摘や松島さんの疑問を取り入れながら、原作の改稿を進めました。最初のタイトルは「2040年、コンピューター将棋に挑む」でした。現在を舞台にするわけにはいきませんので、設定は近未来が必須ですが、もう少しリアリティを持たせるように「2030年」に変更しました。また、当初、天才プログラマーは「翔太(男子高校生17歳)」でしたが、少年誌に合わせて、「翔子(女子中学生14歳)」に変更しました。

On 2015/03/12 19:52, Ito Tomoyoshi wrote:
> 沢様
>
> 第四稿というほどではありませんが、「2040年」を「2030年」に、
> 翔太(17)を翔子(仮名:14)に設定変更した原稿をお送りしておきます。
>
> 中学生のアルバイトは「社会経験を積む実習授業(インターンシップですね)」
> という設定にしました。

On 2015/03/27 15:24, Sawa wrote:
> 伊藤様
>
> お疲れ様です!
> 第1話ネーム、お手元に届きましたでしょうか。
> ご査収よろしくお願い申し上げます。

・2015年3月、松島さんと沢さんでネーム作りが始まりました。

On 2015/04/06 20:06, Sawa wrote:
> 伊藤様
>
> 松島さんから下記のような質問がありました。
>
> 2話目のネーム作業していて質問箇所が2つ・・・
> (絵にする時なので回答が今すぐ必要というわけではないです)
>
> ①将棋会館の改修は外観から全てでしょうか?
> 建て増し、内装のみ?
> ②スーパーコンピューターと普通のパソコンの
> 違い・・・特に外観の違いなどありますか?
>
> ①については全面改修でよいように思いますが、②は「そういえばよくわかんない
> な」という感じです。

・私の役割は、ネームにしたときの疑問に答えることや、それに応じた原作の修正です。

On 2015/04/07 11:55, Sawa wrote:
> 伊藤様
>
> ありがとうございます!
> 大変参考になります。
>
> 松島さんに転送させていただきます!
>
> 沢

・2015年4月11日 第3回打合せ
 松島さんと初めての顔合わせ。午前中、松島さんと沢さんは将棋会館と将棋電王戦を視察。その後、3人での会合となりました。楽しかったですね。

・その後も、沢さんとやり取りを行い、原作の改稿を重ねました。週刊連載枠の20ページごとにエピソードを区切り、内容を精査していきました。

On 2015/05/26 19:31, Ito Tomoyoshi wrote:
> 沢様
>
> 最終9話をお送りします。
> すり合わせができていない部分も残っていますが、
> 全体構成をご覧頂ければと思います。

On 2015/08/31 15:25, Ito Tomoyoshi wrote:
> 沢様
>
> 第10話までを踏まえた第11話(最終話)をお送りしておきます。

On 2015/11/13 18:44, Sawa wrote:
> 伊藤さま
>
> お疲れ様です。
>
> 最終第12話ネームがあがりました。

・2014年12月の段階では5話構成だった作品が、最終的に12話構成になりました。
・この間、実際に会って打合せをしたのは5回ほどでしたが、メールでのやり取りは200通を数えました。加えて、大事なところでは電話打合せを重ねました。

 1年をかけて、原作の加筆修正とネーム作成のお手伝いをして、私の仕事は一段落になりました。 ここから先は松島さんの作画作業が中心となります。

 そして2016年6月、連載開始となりました。