ノモンハン事件と祖父のメモ

 ある新聞にノモンハン事件(1939年)についての特集記事が載っていた。日本とソ連の間で本格的な戦闘に発展し、多数の戦死者が出た歴史的なできごとである。
 私の義理の祖父はこの戦闘に従軍していた。祖父の家族はその事実を知ってはいたけれども、当時の話はあまり伝わっていなかった。祖父は話好きだったが、家族はそれほどの重みを持って話を聞くことはなかったと、妻から聞いた。
 2003年に93歳で祖父が他界したとき、祖父が大事に持っていた一冊の本を一緒に棺に入れてあげましょう、ということになった。五味川純平著「ノモンハン」(1975年 文藝春秋)という本だった。
 ところが、本を開いて驚いた。祖父の自筆のメモ書きや、出陣前の将校たちの集合写真が挟まっていたからである。私はこの本は燃やさない方がいいと進言した。貴重な一次資料だからである。
 歴史は時代とともに揺れ動く。正しい検証には一次資料が不可欠である。その一つ一つは断片的なものであっても、当事者の言葉は重い。
 今日は祖父の残したメモを紹介しておきたい。もし、少しでも真相に近づく資料として使われることがあるならば、祖父も、祖父を慕っていた妻も本望なはずである。

(1)本の冒頭にホッチキスでとめられていた便箋

(2)出陣前の写真

住所と電話番号の記載があった箇所は消してあります。

(3)「ノモンハン」(1975年 文藝春秋)に記されたメモ書き