将棋電王戦の憂鬱(3)

 2015年4月11日(土)、電王戦ファイナルが、プロ棋士側の3勝2敗で終了した。ルールとしては、ハードウェアの統一やソフトの事前貸し出しなど、違和感があった。ルール上の欠陥を露呈するように、対局全体を通して、ソフトのバグ出しという側面が出た。
 ただ、落ち着いて結果を考えてみると、悪くない終わり方だと思い直している。一将棋ファンとしては、このまま、コンピュータ対プロ棋士という大会に幕が引かれることは、双方にとって、それほど悪くはないんじゃないかと思っている。

 将棋は計算機科学の「ゲーム理論」上にあり、一局の勝敗も100手前後で決着してしまう。コンピュータの得意とする分野の一つであり、将棋に関して、コンピュータは人間に勝てないというのは幻想である。ちょうど現在がその分岐点なのだろう。
 私も計算機科学を専門としている一人である。ここまでコンピュータ将棋を強くしてきた人たちには、賞賛を送りたい。

 コンピュータが人間よりも強くなったという認識はすでに広まりつつあり、コンピュータとプロ棋士を融合した新しい将棋が始まるという意見もある。
 しかし、私はその意見に反対である。将棋を楽しく見ているのは、プロ棋士の個性があるからであり、必死の思考から生み出される生身の一手に感嘆するからである。コンピュータの介入は、それを阻害する。人間の知的可能性を過小化する。

 人間同士の知的対戦がこれからも続くことを願っている。1000年を超える将棋文化がこれからも続くことを願っている。

「人間はコンピュータに勝てない」
「人間がコンピュータに勝てないからといって、恥ずかしいことではない」

「それでも将棋は面白い」

##
将棋電王戦の憂鬱(1)
http://d.hatena.ne.jp/yayoi_2011/20130501/1367421092
将棋電王戦の憂鬱(2)
http://d.hatena.ne.jp/yayoi_2011/20140322/1395506084